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祖母に可愛がられた人は観るべし『หลานม่า / How To Make Millions Before Grandma Dies』

หลานม่า

少し前までタイで大ヒットしていた映画『หลานม่า(ランマ-)』です。タイの映画は、アクション系は楽しい反面、人物描写がボロくて内容に入っていけないものも多いのですが、この映画は違います。タイの中華系(世代を遡ると中国にルーツを持つ人たち)家族に存在しがちな実話に着想を得た物語です。残念ながら現在まで日本国内では劇場公開されておらず、今のところNetflixで視るしかなさそうです。

Netflixでのタイトルは『おばあちゃんが死ぬ前に大金持ちになる方法 / How To Make Millions Before Grandma Dies』です。タイトルを見るとハウツー関係のドラマかなと想像しがちですが、中身は孫息子祖母のお話しで、感動系のドラマです。タイでは現代人が忘れてしまったタイ人の本来の感性を揺さぶる作品として大ヒットしました。もともとのタイトルは『中国系タイ一家 / The Chinese Family』みたいな感じでした。ただ、こんなタイトルだと客層を限定してしまうと考えたのか、かなり緩いタイトルに変わっています。

タイトルから想像できるかもですが、タイの中華系の家族の映画です。タイにはタイ族やイスラム教徒系家族などもいますが、そちらの家族とはまた違う世界なので、タイ社会全体を描写したものと誤解しないように注意してください。感覚としては今回はほぼ日本の家族と同じです。ただタイの人の物語ですので緩さがあります。日本より緩い感じがして、かえって感動系の映画として深みを増しています。なお、タイ語の หลานม่า (ランマー)はおばあちゃんのという意味です。

案の定、スロースタートで観客を引き込み、最後に感動させるという流れになります。でも、最後もスローで感動させるのがタイ映画の緩さの味わいです。

日本版のリメイクなどがあってもよさそうな作品ですが、現在は Netflixで視聴することができます。

あらすじ

ストーリーを理解するために人物相関図を参考にします。基本は身内のお話です。外部的要因はほとんどなく物語は進行します。エムが主役ですが、エムの母のチゥ(チュー)に着目して鑑賞すると味わえます。

หลานม่า

物語はゲーム実況中継者になって生きていくと大学を中退し金もなく母親と住んでいるエムを主人公として、エムを通じて描かれます。エムは家族全体を見守るおばあちゃん(祖母)のメンジュと一緒に暮らすために実家に帰ってきます。祖母の最期を看取るための孫の世話のように見えつつも、実はエムには下心があります。エムは少し前にムイ(エムのいとこの女の子)が祖父から1000万バーツ(約4500万円)相当の大きな家を相続したと聞いたばかりでした。ムイは祖父を介護しただけで一夜にして大金を譲られたのです。そう、お金のないエムは、ムイのように介護して財産を相続してお金持ちになろうとたくらみます。おばあちゃんから遺産を分けてもらうため、信頼されようとあらゆる手を尽くすために、おばあちゃんと暮らすことにします。つまり、おばあちゃんの一番大きな財産を相続したいと悪だくみしているのがエムです。

エムは邪な下心があるのですが、最近の三面記事にのるような悪ではありません。あくまでも分け前が少しでももらえればいいという程度で、何千万もの金を奪おうなんて思っていないようです。でも、あわよくばと思っている節はあります。

おばあちゃんの長男キアンは株式で大儲けしている裕福層です。キアンの嫁のピンも含めてお金にはシビアな感じで、どこにでもいる長男の嫁という感じです。ヤバイ息子はソイで、働きもせず借金だけ作るという、これもタイでよくいるタイプの人です。借金の理由も、ほぼほぼギャンブルで、女に貢ぐとかの話ではない点もよくあるタイプです。

エムはおばあちゃんにとりいって遺産を自分に残してもらおうという狙いがありましたが、おばあちゃんと過ごすうちに、遺産のことなどどうでもよくなってきます。おばあちゃんは、自分が死んだら広大な敷地に埋葬されることを、生涯の夢というか目的にしている節があります。その埋葬地は、畳一枚小程度の場所で高級レクサスほどの価格がします。この意味が、映画の序盤ではこの意味を理解していないのですが、後半ではそれなりに明かされます。中国系タイ人には意味のあることなんでしょうが、日本人的には少し解せないところでもあります。

ムイはエムにおばあちゃんの遺産をもらうために、どうやっておばあちゃんからポイントを稼ぐかを伝授します。初めは、そんな感じかなと実践していたエムですが、次第にどうでもよくなってきます。

みどころ

主人公エムの心情変化は味わい深いが、それより深いのはエムの母親のチゥの心情です。一心に自分の母を思い、仕事では無茶ぶりシフトまで決めてしまい、寝ずに看病、治療に付き合うという姿勢は涙さそいます。チゥが登場する場面は普通に描かれているが、ここがこの映画のキモだと思います。母と娘の愛を描いた作品として観るののも、この映画のもう一つの奥深い味わいになります。

エムのいとこのムイは、本映画の本質を語るような役で、タイの女性によくいるしたたかなタイプです。タイは微笑みの国でタイ人はやさしい印象を持ちますが、別に普通の日本人の発想と大きく変わりません。ムイはおじいちゃんをたっぷり看病したから、おじいちゃんからほぼ全財産を受け継いだという、後妻業のバリエーションをしたたかにこなす印象です。でも、悪女感は強くありません。タイの女性は計算高いところもあるので(そういう人が多めに感じる)、この程度は常識レベルなのかもしれません。

ここを味わえ!

おばあちゃんがなくなって、たっぷり看病したエムの母のチゥには何の遺産ももらえませんでした。チゥは自分の母に少しでも生きていてほしかったので、看病したことに見返りなど求めない、必要もないという女性ですが、チゥ兄や弟は遺産目当てで母、ミンジュに寄って来るというヤベェ野郎たちです。「

皆そうだから、エムは自分の母も下心あったんだろうなと思い、「お母さんは何をもらったの?何を期待してたの」と問いかけます。

チゥは答えます。「もらうより、与える側になりたい

その通りです。もらってばかりの野郎はダメ野郎です。人間は与えてナンボです。(自分のものを)与える側にならないといけないのに、成功した兄や、借金まみれの弟はもらうことしか考えていません。もらえて当然と思っているわけです。でも、一番母思いのチゥは何も貰わず、ひたすら与えようとしていたんですね。素晴らしい人です。

より良く味わうための前知識

おばあちゃんはなぜ自分のために立派なお墓が欲しいのか?

死者を埋葬するお墓を、自分の両親はすでに普通のお墓に埋葬されているのに、今回は自分が入るお墓を新しく購入したいのか、少々わかりにくいところです。少なくとも日本では、立派な墓に入りたいと、最後の最後まで思う人は少数派で、どちらかといえば誰の傍にいたいとかの希望の方が重要視されると思います。

メンジュおばあちゃんは、自分が立派な墓に入ることで自分の子供以降が反映するという、中華的な信心をお持ちで、最後までこれにこだわります。

お祖母ちゃんの財産はどうなった?

おばあちゃんは、会社を設立して儲けたわけでもなく、小さなお粥屋さんを細々と続けてお金を作ってきた人です。日本で言えば、たこ焼き屋さんみたていな感じです。財産といっても大したものはありませんが、若い時に購入した不動産が値上がりしているので、この不動産が一番の財産です。この不動産が、誰のものになるかがが映画のポイントでしたが、この不動産は次男のソイのものになります。おばあちゃんが長男ではなく、次男に権利証を渡したのです(物理的に手渡したのはエムの母のチゥです)。長男のキアンはこのことに激怒しますが、次男のソイは不動産を現金化してギャンブルなどで作った自分の借金を返します。娘のチゥには何も残りません。

なぜ、おばあちゃんは長男でなく次男に不動産を渡したかといえば、親心で次男のソイが借金を抱えていることを知っていたからです。それもソイがおばあちゃんの家から、現金をくすねているところを監視カメラでとらえられていて、おばあちゃんはその映像を見たただけてソイの現状が厳しいことを無言で理解したのです。だからお金になる所有物はソイに渡したわけですね。ソイは今はクズですが、そのうち化けてくれると信じているのがうかがえます。

次男坊のソイは本当にクズなのか?

ギャンブルで借金を作り、親の金を盗んで生き延びる姿はクズとして申し分ないソイですが、タイではこういう人はよくいます(日本にも普通にいます)。かわいいもんです。本作ではおばあちゃんは次男坊のソイに唯一の高額資産、住居不動産を譲ります。でも、実質おばあちゃんをを最後まで世話したエムと母親のチウには何も残らず、さすがに良心の呵責があるのか、ソイは不動産売却して借金を返済した後の残額はエムに渡そうとします(でもエムは受け取りを拒否する)。自分がもらったものだから、残額も自分のものだと考えそうなものですが、ソイの行動から根っからのクズではないとみてとれます。

もう少しクズレベルが進行すると、適当な尻軽い女に貢がせるというドクズ路線を走りだすのですが、ソイは自分でまだ何とか借金を世処理しようとしているだけ軽症です。それでも自分の母親のお金を盗み出すレベルの症状は出ているので、仏教的にはこれでも十分堕落していますけどね。

現実には、こういうタイプの人、タイには特に若い人でよくいますよ。でも憎めないタイプです。ギャンブルが好きで、しかも賭け事に弱いってのが典型的なタイプです。クズでもギャンブルに強かったら、そんなに責められないのです。でも、そのクズっぷりが憎めないのです。

キャスト

プッティポン・アッサラッタナクン エム役

Putthipong Assaratanakul

タイではビルキンという愛称で知られる、歌手もやる俳優です。サッカー好きで、タイのお金持ちの学校を卒業していることからして、エリートボンボンって感じでしょうか。

ウシャ・シームクム メンジュおばあさん役

Usha "Taew" Seamkhum

タイ映画界ではほぼ無名の女優でしたが、本作のキャスティングのために行われたオーディションで初主演の本役を得ています。通称テゥ。本当に無名だったんですかね。上手すぎる演技力だと思います。

サリンラット・トーマス チウ役 (エムの母親)

Sarinrat "Jear" Thomas

本作品のキモといっていい、主人公の母親役を演じるのは、サリンラット・トーマスです。通称、ジェール。英国在住です。

女優業もやっていますが、本業はドラマセラピストになっています。つまり演劇を用いるセラピーをやる人ですね。悩みを抱えている人が、仮面ライダーやトランプ大統領、シェーシェィ茂木幹事長のような他人になりきって演じることで、他者の視点を理解し、物事を見つめなおすことを行うセラピーです。英国で修士号も取得したセラピストで英国でセラピスト登録もされてるそうですから、マジで本業ですね。本作品では演技が良すぎるので、女優としてもっと露出してほしいです。もちろんインテリ女優です。

本作ではエムの母親役を熱演しているので想像しがたいかもしれませんが、普通に恋愛もののヒロインも演じる才色兼備です。

本作では、プールでエムがおばあちゃんに「お母さんは夜勤に変えたよ」とばらされるときの表情が、さすがと思わせるシーンがありました。若き日のジョディー・フォスターレベルの演技ですね。

トンタワン・タンティウェーチャクン ムイ役

Tontawan "Tu" Tantivejakul

トンタワンは現在、チュラロンコン大学歯学部(タイの最高学府っぽい)に在学しているという、カシコイ女優さんです。通称トゥ。本作では悪女役って感じが強いですね。タイでは人気の女優・モデルで本作でも、現地では主演扱いです。本作では、エムのいとこの役として登場します。

冒頭のシーンで、エムがのぞき込んでしまう、腰とお尻周りのカットがあったりと、エロい誘惑系で登場するのかなと思いきや、メンター役っぽい扱いです。タイ女性のしたたかさをさらっと演じているので、恐ろしい感じも受けます。

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