現在 Amazon プライムで会員は無料で視聴できる「プリデスティネーション」をピックアップです。
私個人は、映画館で見逃した作品でしたが、SF好き、ミステリー好きな方はぜひ見ておきましょう。
逆に、タイムマシンというSFを受け入れられない体質の人は、見ないほうが幸せです。
本稿ではネタバレ部分がありますので、まだ見ていない人やマジで楽しみたい人は「予習ポイント」だけ読んで、映画を見てください。
映画のデキがいいので、ネタバレを読んでしまったとしても楽しめると思います。
本作品は、 U-NEXT や hulu や Amazon プライムビデオ で視聴できます。予習ポイント
バイオリンケース型のタイムマシン。
デザインとしてはいいと思う。
- タイムトリップするためのバイオリンケース型タイムマシンが登場する
- 「タイムトリップで歴史改変できない」という前提がある
- 過去のなにがしかの行為を行い因果律が崩れるのかどうかについては、本作品は語っていない
- タイムトリップを繰り返すと、頭が少し悪くなる方向にブレる
- 「最初の任務は最後と同じくらい重要だ」という伏線が意味深
タイムトリップはこの映画の肝なのですが、タイムトリップすると痴呆症や精神分裂のリスクが高くなるという前提があります。高度なIQでも、タイムトリップでバカになっていくということなのですが、どちらかというと理性がぶっ飛んでいくという方向です。
映画のあらすじ
爆弾を解体している男性が、爆弾魔に邪魔され爆発事故で大やけどを負う。皮膚移植により自分の顔が変わってしまう。
その大やけどの時に、自分に近寄ってきた黒服の男は誰なのか、というか誰もが「ソレ、オマエ自身じゃね」と思わせて物語が進む。
ひどくやけどを負って、顔が変わってしまったというくだりがとにかく、演出者としては見せたいポイント。
大やけどの顔は後々、イーサン・ホーク演じるバーテンダーの普通の(この版ではやけど痕などなくなってきれいに回復している)顔に落ち着く。
軽口のつもりか「お袋」という言葉も飛び出すが、そもそも「アンタのお袋って誰なのさ」というツッコミは、二度目見たときに誰もが思うはず。
バーテンダーとして働いてい男(イーサン・ホーク)は本当は時空警察(航時局員)のエージェント、爆弾が仕掛けられる直前にタイムトリップして、爆弾魔を処理する仕事をやってます。
彼が働いている店に、不気味な人物(サラ・スヌーク)がやってきて、身の上話を聞くことになる。
なんとも、その人物(ジェーン)は、女として生まれたものの、親に捨てられ孤児院で育ち、性欲もないことにも気づいていた少女時代。宇宙に興味を惹かれ、卒院後、「宇宙飛行士の性処理要員」として政府機関の一員して働けるかもというチャンスに出会う。ところが、メンバーといざこざで衝突し、失格になる。
写真は、要因としてのテストを受けている場面。
宇宙に行くことを夢見ていたジェーンは落ち込み、偶然出会った人物と恋に落ちる。再び、政府のスペースコープ機関のロバートソンから「過去や未来に縛られない人物を探している」と、ジェーンにスカウトがかかる。
過去や未来に縛られないという意味を、天涯孤独、親も子供もいないというような意味だと捉えたジェーン。
ところが、自分が妊娠していることに気づき、このオファーはもちろんダメになり、せっかくの恋人は失踪し、帝王切開で出産することになる。
元気な女の子を産んだが、そこで、衝撃的な事実を医師から告げられることに。
ジェーンは両性具有で、出産時の出血がひどく、女性としてもう妊娠はできなくなる。だから、もう一つの男性器を再生して命を救った、今後は男性として生きていける。心は揺れるが、ジェーンは性転換手術を受け入れることになる。また、少女時代の男勝りのケンカ強さ、身体能力の高さについても少しながら納得がいく。
さらに、ここでジェーンでまたもや災難が降りかかり、生後二週間で今後は一緒に生きていこうと誓った自分の赤ん坊が病院から盗まれてしまう。全くの行方知れずとなり、絶望に打ちひしがれる。盗んだ男は、今のジェーンやバーテンダーのように細身のヤツだったとのこと。
ジェーンは数度の手術を経て性転換を終え、ホルモン投与により、骨格も声も男性のものになる。この時点で、見かけだけでなく生殖能力もある男性になっている。ジェーンはニューヨークに移り住み、ジョンと名乗り男として生きていくが、最終的に就いた仕事は女性目線で悩み事相談を受けるライターである。ジェーンは、私の人生を奪った男(運命の人)が憎いという。
告白を終えたジェーンに、その男に会わせてやるとバーテンダーはささやく。会わせるといっても、タイムトリップで会った時代に飛ぶという意味だ。ここから、物語は急展開する。
過去のジェーンが夜間学校の帰りにぶつかり、恋仲になった謎の男こそが、爆弾魔の可能性があるというセリフも意味深。その通りかもしれないが、この出会いのシーンでは、その男は紛れもなく「性転換した未来のジェーン」であること体験してしまう。自分(ジェーン)の人生を変えてしまうほどの影響を与えた謎の男は、自分自身だったのだ。
昔の自分の気持ちこそ、今話しているジェーンの考えていることそのもの。もちろん会話は弾むし、よく知っている仲同士という連帯感が自然と生まれてしまう。
物語では、ここは無理や過去の自分を無視する、そのまま立ち去るという選択もあり得るような流れではあるが、もちろんそんなことにはならない。ジェーンは自分自身が嫌いで、自分を鏡で見ることも嫌で、嫌なことばかりで性転換する前の自分の顔をはっきり覚えていない。だから、過去に女であった時の自分の顔を見て、惚れ惚れと「そんな顔をしていたのか、きれいだ」と陶酔してしまう。
一方、バーテンダーは航時局員が顔に大やけどを負う1970年3月にタイムトリップ。この場面は、本映画が始まるシーンてす。ここでやけどでタイムマシンを手でつかめない航時局員を手助けしたのは、未来から来た自分(バーテンダー)であることを体験する。うっすらと、航時局員の顔も見えるので、結局バーテンダーの顔になる前の昔の顔はどうなのかもチェックしよう。
バーテンダーは過去の自分(航時局員)が処理に失敗した爆弾の破片を手にし、この破片をもちに後々に、真の爆弾魔(フィズル・ボマー)を追い詰めることになる。どう考えても未来から来たエージェントが優位に立つはずだけど、これまでタイムトリップしても、上手くかわされて、結局のところフィズル・ボマーに裏をかかれてばかりいる。
ロバートソンが「未来への種をまき忘れるな」とバーテンダーに忠告し、バーテンダーは、ジェーンが出産した1964年3月にタイムトリップし、その赤ん坊を盗み出す。そして、1945年9月にタイムトリップし、赤ん坊を孤児院に置き去りにする。今後、赤ん坊は1964年に生まれて、1945年の赤ん坊時代を過ごすことになる。ジェーンの赤子を誘拐したのは、稀れもないバーテンダーだったことがわかる。
孤児院を去る前に赤ん坊へのバーテンダーのセリフ、「いい旅をジェーン」、「強くあれジョン」、この赤ん坊はジェーンでもありジョンでもあることを、すでに承知していることがわかる。バーテンダーがジェーンの人生そのものを回転させていることが、観客に伝わる。悪い言い方をすれば、ジェーンの人生をもてあそんでいるようなとんでもない悪い奴だと観客は感じるはず。
バーテンダーがジョンを迎えに来る。ジョンはジェーンに「すぐ戻る」と言い残し、バーテンダーと航時局員本部(1985年8月12日)にタイムトリップする。結局、過去のジェーンの前から時間的に失踪することになる。ジョンは組織の一員となり、翌日の1985年8月13日に、ロバートソンからバーテンダーがこれまでやってきた爆弾魔の追跡任務を引き継ぐ。
引退して、爆発の2ヶ月前のニューヨーク (1975年1月7日) にタイムトリップ。映画で語られる終点なので、航時局の規律通りタイムマシンは停止する。つまり、今後タイムトリップできなくなるはずだが、なぜかタイムマインはエラーを起こしてしまう(つまり、まだ使える)。
このあたりの展開は微妙で、バーテンダーは「フィズル・ボマーのことはもういいから引退を楽しめ」という声と、ロバートソンの「爆破事件の数か月前だぞ、爆破が起こることを知ってるくせに、ニューヨークで隠居するつもりか?」の二通りの選択肢がある。
もちろん、タイムトリップで判断能力が弱っているのかもしれないが、鑑賞者の期待通りフィズル・ボマーを仕留めに行く方を選ぶ。タイムトリップは2か月ほど、それならさほど精神を病んだりするリスクも少ないと判断したのか、いずれにせよタイムマシンがまだ動くので、爆破事件までのんびりと過ごすようなことはしない。
爆弾魔の行動ルーティンから、コインランドリーに午後一時に立ち寄ることがことがわかっているので、そこで見つけた相手は「未来の自分」だった。
つまり、爆弾魔(フィズル・ボマー)は航時局引退後の自分自身だった。ここで、フィズル・ボマーは引退後のバーテンダーに「俺たちは互いがすべてだ」といい、航時局員は爆弾魔から学び、爆弾魔は自分の過去のタイムトリックの記憶から航時局員を出し抜くという構図を連想させる。
工場は爆破したおかけで毒物を垂れ流さずに済んだし、兵器も奪われずに済んだと、爆弾魔らしい理屈をつけて話し出す。
バーテンダーは「オマエにはならないしお前にこれ以上人を殺させない」と言い残しフィズル・ボマーに銃弾を数発ぶち込み殺害する。そのあと、フィズル・ボマーを引き継ぐのかどうかは、映画では描かれず、鑑賞者次第の解釈になるが、おそらく引き継ぐことになる。そして、最後に衝撃のオチをオープンにして映画は終わる。
チェックすべきシーン
フィズル・ボマーの髪形、女の髪形にも男の髪形にも見えるので、いい伏線になっています。
- 物語上、カットしてもいいジョン(ジェーン)のスペースコープ機関への再応募のくだりは、視聴者にジョーの手術痕を印象付けるためのものである。
- やけどを負うシーンなど、誰と誰が時空を超えて関係しているかは、髪形に注目すると予測しやすい
- 主人公の(イーサン・ホーク演じる)バーテンダーの名前は一切語られない
- スペースコープ機関要員のロバートソンの言う「過去や未来に縛られない人物」はもちろん天涯孤独というような軽い意味ではない
- 両性具有ネタは、本人が妊娠できて、かつ妊娠させられるかどうかの方に重きあり
- 冒頭でやけどを負い、皮膚移植で顔が変わってしまうシーンは、顔が別のものになるという意味で受け止めるのが良い。傷跡を残さず、別人に代わる程度に受け止めよう。顔やその周辺に痛々しいやけど痕や手術痕があるはずだとか考え始めると、物語を見失う。
- ジェーンが性転換を余儀なくされる出産後、ロバートソンが未来を見越してジェーンを女性のままにするか、男性に換えてしまうかを判断しているように見えるシーン
出来事を整理してみる
# | 年月 | 出来事 |
---|---|---|
① | 1945年9月 | ジェーンが孤児院に置き去りにされる |
➁ | 1963年4月 | ジェーンが運命の人と出会い、その後妊娠 |
➂ | 1963年6月 | ジェーンの運命の人が失踪する |
④ | 1964年3月 | ジェーンが女の子を出産、その後性転換、赤子は誰かに盗まれ行方不明、ジェーンはジョンと名乗ることになる |
➄ | 1970年3月 | 航時局員が顔に大やけどを負う |
⑥ | 1970年11月 | ジョンがバーに初めて現れ、自分のことを話する |
⑦ | 1975年1月 | バーテンダーが航時局員をやめる最後のタイムトリップ |
⑧ | 1975年3月 | バーテンダーがフィズル・ボマーを射殺する |
本編ではこの図のようにストーリーが進むわけではないが、上の運命の人というのは実はジョンのことです。ということは、未来の(性転換で男性になっている)若いころ(生転換前の女性だった頃)の自分と性交渉し、子供を産むというフローになる。
鶏が先か卵が先か
「鶏が先か卵が先か」という意味深な問いかけが数か所出てくる。はじめはバーテンダーのくだらないジョークに交えて無理やり押し込んだ感があるが、これが実に大きな伏線になっている。
映画の後半に差しかかるころ、ジェーンを妊娠させたのは性転換後の未来のジェーン(ジョン)であることがわかる。このことは特にネタバレでもなく、勘のいい鑑賞者なら、前半のジェーンの告白部分で余裕で推測がつく。制作側も、このことを特に隠す意図はなく、それとなくほのめかしてもいる。
ネタバレ部分は、ジェーンが生んだ女の子がタイムトリップで1945年9月の孤児院に置き去られ、それがジェーンであるという点かも。しかし、それも、勘の鋭い鑑賞者はすぐに気付きます。イエスキリストでさえ、マリア様という別人格の母がいるのに、ジェーンには父も母も自分自身という、いかんとも知れない遺伝ループが閉じてしまうのがさすがSFです。
ところが、この点はよく考えると訳の分からなくなる部分でもある。ジェーンはジョンと性交渉を持つまで純潔を守っていて、妊娠出産したことが原因で性転換を余儀なくされる。性転換したジェーンがジョンになるわけで、ジョンが存在しない限りジェーンは妊娠せず、性転換もすることはない。ジェーンが妊娠した子が成長したら、今の自分自身になるわけだから、ジェーンは自分で自分を生んだことになる。
ここで、ジョンが先かジェーンが先かというパラドックスに満ちた難題が浮かび上がる。最初のジェーンは誰の子供なのかと考えて無限ループに陥るのは、製作者の罠にはまっているだけです。答えは出ませんから、考えないようにしましょう。
つまり、ジェーンには祖先も自分自身しかないという、時空の中の始まりと終わりのある紐ではなく、閉じたループができてしまっている点が面白く、これがジェーンにしかできない特殊な任務に繋がっていくわけである。
余談ですが、このループが永遠と回ると仮定すれば、一回目のジェーンの妊娠は人工授精でも何でもいいわけで、あとは誰か時空局員の誰かが赤子を盗み、過去の孤児院にとどける。一回目のループを作れば、あとはジェーンを操って無限ループさせるだけとも言えなくもない。
自分が爆弾魔だったと早めに知って、死ぬなりなんなりオトシマエをつけられなかったのか?
この点は、誰もが少しは思うところでしょう。でも、自分が爆弾魔だと知ることができるのはタイムマシンが2度と使用できなくなる時です(つまり壊れたとき)。自分で死ぬことを選ぶのが筋ですが、この筋は一般的な意味での筋とはプロセスがかなり違います。
首を吊るなり飛び降りるなりのわかりやすい方法ではなく、自分が自分に殺されるというループで終わる必要があります。爆弾魔はまだ正気だったころの自分に殺されて、殺した自分は頭がイカレて爆弾魔になる。そして、また正気だったころの自分に殺されるというループになります。
ホントのネタバレ
性転換を経てジェーンがジョンになり、ジョンで1964年3月にタイムトリップすることになる。同一人物だけど、ジョンもジェーンも同一時空間に存在することになる。男女の交渉を経て、ジョンとジェーンの赤ん坊ができて、その子が盗まれる。その子はジェーンの生まれた1945年9月へタイムトリップし、孤児院に置き去りにされる。その子の名前はジェーン、つまりジェーンは自分自身と性交渉し、自分自身を産む。これが時空間の中でループし、ジェーンには自分以外に親も子供もいない、つまりジェーンの親はジェーンであり、ジェーンの子供はジェーンという閉じた系譜ループになる。
ここまでは、映画慣れしている人ならすぐに推測してしまうストーリーですが、この映画のポイントは、性転換したジェーンはジョンと名乗り、顔に大やけどを負い、イーサンホーク演じるバーテンダーになるという点です。この点は、大やけどの跡というヒントでもあれば、序盤で気づけた鑑賞者も多いのですが、やけどの跡は完全に治癒したということになり、映像上のヒントはありません。製作者側の意図で、観客に悟らせたくなかったのか、人物判定の助けるわかりやすいヒントは置かれていません。
やけど跡など全くないバーテンダーですが、あれはジョンがやけどから皮膚移植し、回復した後の顔です。ジェーン ジョン バーテンダーと顔が変化します。バーテンダーの上半身の裸が映し出されるシーンで、腹部の帝王切開の手術跡、胸部の性転換手術後が残っていることで、観客にオチを伝えてくれています。
さらに、歳と経験(タイムトリップ)を重ねたバーテンダーは、引退後は精神が崩壊し爆弾魔(フィズル・ボマー)になります。オチはジェーン、ジョン、バーテンダー、フィズル・ボマーは、一人の同じ人間、同一人物だという点です。
映画版と小説版との違い
原作の日本語の題名は『輪廻の蛇』です。自分の尾を食らう蛇のようにループした因果律のようなイメージですね。小説版には爆弾魔という設定がありません。映画化されると、小説版のいいところが吹っ飛んでしまい、原作ファンの反感を買うことが多いのですが、本作品はその逆というか、小説版をより分かりやすくアレンジして楽しめるようになっています。
地味な感想
二度視聴しましたが、楽しめました。オーストラリア製の映画はハリウッド的な媚びた感じが無くて、面白くてハマります。美男美女だけで構成される映画は飽き飽きしますが、そこそこばらけた感のキャスティングは、視聴者を飽きさせないので大好きです。
サラ・スヌークが演じるジョンという男、レオナルド・ディカプリオに似た雰囲気がある。
サラ・スヌークが演じるジョンという男は、レオナルド・ディカプリオに似た感じがあるので、ジョンはレオナルドにオファーしたらよかったかもですね。そうすると、ジョン登場時点で、オマエはそんな男の恰好していてもオンナだろというツッコミは無くなり、素直に騙されて映画を楽しめますね。
ラストシーン、主人公が連続爆弾魔を引き継ぐのかどうか不明ですが、「タイムトリップで歴史改変できない」という大原則に従うと、このタイムトリップのループは閉じて回り続けなくてはならないはずで、やはり爆弾魔を引き継ぐのが普通の流れかと思います。
タイムトリップで肉体的に歳を取るのかどうかとか、因果律は必ず守られるのかとか、いろいろ説があります。最近では、因果律は守られなくてもいいというような説も普通にあるようですから、例えばタイムトリップして、過去の自分を殺しても、現在の自分には影響を与えない(死なない)というような考え方をしてもいいようです。だから、過去の爆弾魔の犯行を止めたとしても、未来でその爆弾魔の仕業で死亡した人は死ななかったことにならないとも言えます。言葉で説明するのも面倒なくらいこんがらがりますが、過去と未来の矛盾は大アリという説は、映画化しやすいですが、観客は混乱しますよね。
時空警察の職務遂行前の宣誓です。
「分流」って何のことかわからないまま物語を見るわけですが、意味深ですね。
考えすぎかもしれませんが、時空警察組織の重要人物、ロバートソンも同様のループの中の人でないと成り立たないように感じます。考えすぎれば、ジェーンとロバートソンも同一人物である可能性があります。それは、任務に就く際の「分流を作れば死刑になり得る」という宣誓はどういうことなのか考えてしまいます。ロバートソンはジェーンの分岐した人物であると考えると、物語的に丸く収まりそうですね。ジェーンの出産シーンはカットが少ないため、もしかして一卵性双生児を産んでいた可能性などもあり得そうです。すべて自作自演、ループが閉じて完結という感じになります。
物語中の伏線「最初の任務は最後と同じくらい重要だ」ですが、文字通り最初と最後がつながって、ループを続けるために重要という意味に解してもいいように思います。要するに、最後まで進んで最初に戻る、死んでまた生まれるというループを、俗にいう輪廻転生というものとは違うループに入るということですね。
つまり、タイムトリップで何をしようと歴史は変わらない(あるいはタイムトリップでは歴史を変えられない)という前提があるなら、タイムトリップして時空の中で何やらする人物はすべて、閉じたループの中にいる必要があります。ジェーン、ジョン、バーテンダー、ロバートソン、フィズル・ボマーの中でループが閉じていれば、つまりまとめて自作自演していたら、とりあえず落ち着くのかなという感じになります。閉じていなければ、ロバートソンが強大な支配力を持ちすぎてしまいますからね。自分自身の作った爆弾、犯行手口(経験)から学ぶというのが、この映画の中では皮肉ですね。
本作品では、タイムトリップすれば頭がおかしくなるリスク、痴呆症などの症状が出るのリスクが高くなると設定しています。だから、観客を楽しませるために語らない方がいいところはすべて、バカになったのでわかりませんと、ズルして逃げる小技が使われています。
完全に理詰めでは楽しめないので、視聴時には上手くだまされてやるのが満喫するコツですね。ただ、油断すると大切な伏線を見逃すので注意です。
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