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シェールガスってどうよ?『プロミスト・ランド』

プロミスト・ランド

シェールガスの掘削利権をネタにした映画『プロミスト・ランド』です。主演と共演のマット・ディモンジョン・クラシンスキーが脚本も書いています。今から10年ほどの前に公開された映画ですが、公開当時は、マジで米国はヤバイことやってると感じたものです。

米国のヤバさは現在も変わりませんが、シェールガスを電気自動車のリチウム電池の希土類物質、自然エネルギーなどに置きかえると、利権をむさぶる構造が形を変えて、複雑化し成長してきているのが実感できます。

本作品はシェールガスの採掘権をめぐるアメリカの田舎で展開される人間模様を描写しています。何から何まで、大手企業や海外でのCIAなどがやってると言われている手法で、田舎者とそのインテリ(都会)組を丸め込みながら、利権をむさぼります。

日本においては、今後は水質利権などで同様のことが外国を交えて行われるかもしれません。

本作品は、 U-NEXT huluクランクイン!ビデオ Amazon プライムビデオ で視聴できます。

あらすじ

エネルギー企業の敏腕営業マンのスティーブ・バトラー(マット・デイモン)は、営業パートナーのスー・トマソン(マクドーマンド)とともに田舎町にやって来た。町は近年の経済低迷で大きな打撃を受けており、よそ者の二人は、地元住民が切望していた財政低迷の救済策として、自分たちの土地への掘削権を求める同社の申し出を受け入れる可能性が高いと見ている。

二人にとって簡単そうに見える仕事は、町の人皆に尊敬される学校教師フランク(ハル・ホルブルック)が異議を申し立てたことと、公私ともにスティーブに対抗するもう一人の環境活動家、ダスティン(クラシンスキー)率いる草の根運動の支援によって複雑になってしまう。

みどころ

本映画ではシェール・ガスが本当にクリーンなのか、発展途中なのか結論は出ていません。シェール・ガスに絡む採掘土木工事でいくつも問題が発生している事実はありますが、今後解決できるものなのかどうか、映画公開から10年以上たった今も不明なままです。

『プロミスト・ランド』の監督はガス・ヴァン・サント、リベラル気質な監督だと思いますが、演出は単に事実を描写して、視聴者に考えさせるというスタイルです。

テーマは、自分の仕事や人生の見つめなおしってところかな。特に順風満帆な人向け。

社会問題を背景に人生の転機が描かれる

プロミスト・ランド(hulu)

人生はいつでも、やり直せる。

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キャスト

マット・デイモン(エネルギー企業の敏腕セールスマン、スティーヴ・バトラー役)

マット・デイモン

俳優だけでなく、脚本もこなすマット・デイモン演じる、巨大エネルギー企業の敏腕ビジネスマン、スティーヴ・バトラーが冒頭で、昇進のかかった会社幹部との会食に臨みます。

スティーヴは農業以外にろくに産業のなかった田舎が故郷で、その故郷もすでに失われている田舎出身で、都会に出て出世街道を順風満帆に歩んできた人物。心が優しく人情に厚い明ものぞかせるが、つまり巨大企業で出世して、今は第二の人生を謳歌したいと考えていいます。

出世を確実にするために、地下に大量のシェールガスが眠る町で、採掘が可能なところを一軒一軒回って、住民から採掘権を買い叩き、会社の利益に貢献する必要があります。

スティーヴの第二の人生とは、なんとも俗物的な、よくあるビジネスマンモノのネタかと思いきや、彼は、人との触れ合いを通じて、本当の第二の人生に目覚めることになります。

自身の再生、正しい再生、正義のある再生は、最終的には田舎者としてのスティーヴの自己肯定を祝福するものになります。

フランシス・マクドーマンド(スティーヴの相棒、スー・トマソン役)

フランシス・マクドーマンド

絶妙に年齢の重ねて味のある、フランシス・マクドーマンド。本作ではスティーヴの相棒、スーを演じます。

映画の中で、スティーヴが手掛ける仕事のパートナーを任されたのが、スーです。スーは頭の切れる女性で、田舎者の心に取り入るため、地元の雑貨店に入り、チェックのネルシャツほか服一式を買い揃える。もちろん、スティーヴもそうします。身なりから彼ら流に合わせる必要があるというわけです。

スーは滞在中ずっとスティーヴと行動を共にするが、職業上のパートナーという関係から決して逸脱しない、それでいて互いにずけずけと毒を吐きあえる親密な距離感を維持している。

異性との成熟した距離感を演出するのは、マクドーマンドの名優ぶりが味わえるところである。監督も、雑魚女優なら、脱いでベッドに入って余興を作っておしまいにしてしまうが、マクドーマンド相手にそんな茶番はやれないということです。

プロミスト・ランド スー

なお、スーは家に残した息子のことを絶えず気遣いながら、いつの間にか雑貨店の店主と仲良くなっていく、大人の味のある女性です。最後、雑貨店の店主と別れることになるのですが、別れ方がなんとも大人というか、かっこよいいです。

ラスト間際、あんな感じでカッコよく別れることができる女性、今でもいるんですかね。多くの人は真似するとケガすると思います。自身の成熟度に合わせて、カスタマイズしましょう。

ハル・ホルブルック(元ボーイングの技師、フランク・イェーツ役)

ハル・ホルブルック

本作のストーリー的なコアと言ってもいいい、田舎街の中で唯一の高学歴、超インテリの高校科学の教師、フランク・イェーツを演じるのがハル・ホルブルックです。トニー賞受賞の名優ですが、2021年に95歳で他界されています。なお、ハル・ホルブルックは90歳を超えてからも現役で活動していたという、引退なんて言葉を決して口にしなかった、偉大な俳優と言えると思います。

本映画『プロミスト・ランド』では、フランクはスティーヴらが買いたたきにきた採掘権を科学的に、論理的にツッコミを入れる役割です。スティーヴは採掘量をバカ少なく見積もって、安く買いたたこうとするのですが、フランクは科学的な調査結果を引用し、暗に「ナメルな、コノヤロウ」的な反論をします。

しかも、採掘で水圧破砕法を使うと、数々の問題が生じることを指摘する。結果的に、住民のあいだにスティーヴとスー、エネルギー企業グローバル社への不信感が広がることになります。

映画では、この滋味深い老人が登場することで、無知な田舎者と一方的に搾取する狡猾な都会人という、誰もが予想する対立構造をごっちゃにしてしまいます。

一連の採掘権をめぐる騒動は、フランクが登場することで、スティーヴに田舎者としての自分自身を見つめなおす機会をあたえることになります。

ローズマリー・デウィット(小学校教師のアリス役)

ローズマリー・デウィット

都会から出戻りして、田舎町の小学校教師をしているアリスは米国ドラマでよく見る、ローズマリー・デウィットが演じます。

アリスが田舎の生まれ故郷に戻ったのは、都会での夢を追うのに疲れたから、競争に疲れたからなどいくつかありますが、戻れる田舎が存在しているというのが、スティーヴとの対照になっていて、本作の鍵です。

本作でアリスは、アリス自身を見せることで、スティーヴに仕事と目的を見つめなおすきっかけを与える役です。

ジョン・クラシンスキー(環境活動家、ダスティン・ノーブル役)

ジョン・クラシンスキー

環境保護団体の活動家を名乗るダスティン・ノーブルを演じるのが、本作の脚本もマット・デイモンとともに手掛けたジョン・クラシンスキーです。ダスティンの故郷、ネブラスカでは、水圧破砕法によって農場が荒廃したというスピーチを、田舎町でふれまわります。

ネブラスカ州

ネブラスカ州の位置は、日本人は意外とわからないものなので、上の図を念頭に映画を視るとわかりやすいです。終盤の謎解きに役立つと思います。アメリカの中央あたりにある、都会とは言えない場所ですね。船で移動できる場所ではなく、もっぱら車、電車、飛行機ぐらいしか移動手段はありません。

ダスティンは、牛の倒れている写真が載ったプラカードを町中に貼って回ることで、環境を重んじる人物として住民たちの信頼を獲得していきます。

ところが、こいつは曲者で、実は役割を演じていたにすぎないということが、物語の後半で見破られます。

ガス・ヴァン・サント(監督)

ガス・ヴァン・サント

リベラルな気質の監督、トレイシー・チャップマン、エルトン・ジョン、デヴィッド・ボウイなどのミュージックビデオも手掛けるガス・ヴァン・サントが本作の監督です。

実は主演のマット・デイモンが本作『プロミスト・ランド』の監督デビュー作になる予定でしたが、準備時間不足、撮影面での意見の対立などから、デイモンは監督を降板し(でも出演はそのまま)、ガス・ヴァン・サントが新たに監督として加わったという経緯があります。

政治的なメッセージを声高に訴えるだけの映画を作るタイプではなく、自分にできることと映画にできることの限界を理解している監督だという評価をよく聞きます。

映像の特徴としては、雲をタイムラプス撮影、空撮で土地の広がりを描写したりするのが得意で大好き、監督作品の特徴です。

監督はゲイであることを公言しており、ケンタッキー生まれで、ずっとオレゴンで暮らしています。決してニューヨークやロスに住もうとしないヴァン・サントは、現代アメリカの「田舎者」であることを肯定的に受け入れているのがわかります。

オレゴン州もワシントン州、カリフォルニア州と同じく比較的リベラル気質な州です。洗練された趣味を持つゲイのリベラル監督しては、もっと容易に受け容れてるはずのニューヨークなどには移らないところが、監督らしいという感じです。

トリビア

物語の舞台はペンシルヴェニア州です。ニューヨークに比較的近いところ、いわゆる北部です。でも、映画の中の地権者は、南部なまりで話します。

このことは、公開当時「北部の人は南部の人をバカだと思ってるから、田舎者を描写するときは南部なまりで話させた」と、話題になりました。

気になる会話

ローズマリー・デウィットとマット・デイモン

スティーヴがアリスと出会って、中を深めるシーン

Alice: Let me guess: 40, married, marketing, two kids.

Steve Butler: 38, stripper/waitress,but born to be a singer.

Alice: Fuck you, I'm a teacher!

Steve Butler: No, I was talking about me. You wanna see a dance? It's 100 bucks.

アリス: (あなたのことを)当ててみるわ、40歳、既婚で子供二人ってとこね。

スティーヴ: (君は)38歳で、仕事はストリッパーかウエイトレス、でも歌手志望なんだ。

アリス: バカ(失礼ね)! 私の仕事は(学校の)先生よ!

スティーヴ: そうじゃないよ、自分のことを言ったんだ。ダンスを観るかい?100ドルだよ。

使い方

このシーンではアリスが「Fuck you」と、その後、スティーヴに言い訳する間を与えてくれますが、すぐさま席を立たれたりすると、上手くいくもへったくれもあったもんじゃありません。

ストリッパーというわざと言葉を入れて、相手を意識的にムカッとさせるのがポイントです。調子に乗って、ストリッパーの代わりに whore(ふしだらな女/娼婦)みたいなワードに変えてしまうと、地獄を見ますので絶対やめてください。

覚えておくところは「No, I was talking about me.」です。その後の誘い文句はアレンジする必要がありますね。

水圧破砕法

参考までですが、シェールガス(オイル)は、頁岩層(けつがんそう)と呼ばれる硬い岩盤に含まれています。ここに高圧で水を注入し、割れ目を生じさせる採掘が、水圧破砕法です。

普通は1500~3000万リットルもの大量の水を、一つの井戸を掘るのに使うので、地下水の汚染や不適切な排水処理による土壌汚染が懸念され、現実に汚染が起きています。

フランスでは2011年に水圧破砕法を禁止する法律が成立し、ドイツでも2017年から、飲料水と自然環境の保護を目的として、粘板岩、泥灰岩、粘土、石炭の各層での水圧破砕は全面的に禁止としています。

ネイティブと少し違って受け止めたところ

プロミスト・ランド フランクMA

グローバル社の調査部が、Skype でフランク・イェーツについての報告をスティーヴに伝える場面

Frank Yates. MA, engineering, MIT.

「フランク・イェーツは MIT でエンジニアリングを修めてる(専攻していた)ぞ」というセリフがあります。明らかに MA(エム・エー)と発音しているので、通常は Master of Arts文学修士)のことを意味するのですが、文脈上、この MA はマサチューセッツ州(Massachusetts)のことを意味していると思います。

ただ、ネイティブは「M.I.T. で文学修士なんて、そもそも文学の学科がないよ。デタラメの脚本だよ。」なんて言う人もいるので、MA は何が何でも文学修士とするべきでしょうか、私の意味のとり方があっているかどうか、少し自信が持てません。

MA がマサチューセッツ州だとして、MIT はマサチューセッツ工科大学だから、わざわざ二回もマサチューセッツは言わないだろうと普通の意見がありますが、MIT は固有名詞なので、マサチューセッツにあるマサチューセッツ工科大学という言い方はアリだと思いますけれど、かつそういう言い方をする人もいるんですけどね。

別の意味のとり方として、MA は数学学会(Mathematical Association)という意味にとれなくないかもしれません。

シェールガスは結局どうなの?

本作品のテーマは、厳密にはシェールガスがクリーンなのがどうかというより、シェールガスの採掘権を大企業に売却して、売った土地に好きな事させて、皆さん幸せになるのですかということがテーマになっています。

シェールガスは、現在のところ地中近くにガスが貯まった気泡のようになっている部分を、ストローで吸い上げるか、液化してくみ上げるか、原始的だけれども大げさなことをして取り出しています。

問題は、吸い上げ、汲み上げるるまでに、大量の薬品などを使って地盤をしっかり固めたりして、地崩れなどを防いでいたのですが、ガスを取り出しすぎると、気泡部分の圧力が下がりまくるからか、地盤沈下(地震、水質汚染)などを引き起こすとされています。現にそういう事件が起きています。

ガスを取り出すのは、やっぱりいろいろ難儀するようで、それでも取り出すこと自体は成功しています。ただ、その後の地盤沈下などは、企業の知ったことではない、地盤沈下したら廃棄するだけという感じになっています。一昔の廃坑みたいな感じですね。

結末?

プロミスト・ランド アリス

プロミスト・ランドとは?

映画終盤で分かり始めるのが、田舎の生活が根ざしている大地そのものが本映画の真の主題に違いないと感じます。「約束の地/プロミスト・ランド」は、遠い彼方にあるのではなく、われわれのすぐ足元にあるのだという意味でしょう。

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社会問題を背景に人生の転機が描かれる

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